>>753
なるほど

あまぞん
球面調和函数と群の表現 単行本 – 2018/7/26 日本評論社
野村隆昭 (著)
数学・物理学・工学など多くの分野に現れる《球面調和函数》について、表現論の観点から一貫した形でまとめられた本格的入門書。

5つ星のうち5.0 遅れて来た将軍
2019年4月27日
 このような重要書作物が、今まで日本で出版されなかった事自体が不思議。
整数論の黒川・小山組が独占体制に入っているのが我慢出来なくなったのか……。
 杉浦光夫先生の『ユニタリ表現入門』の出版が2018年5月、野村先生の『球面調和関数と群の表現』が同年7月である。

susumukuni
5つ星のうち5.0 球面調和関数を中心に据え、等質空間上の調和解析とリー群のユニタリ表現が美しく交錯する様を描写する素敵な書
2018年8月29日

本書の主題は第6章「Laplacianと調和多項式」から第14章「L2(Rn)の既約分解」までに叙述されている。従って、第6章から読み始め、必要に応じて前半部と附章を参照するという読み方が良いと思う。第6章から第8章までで古典的理論に相当する部分が解説されている。特徴的な箇所として、ラプラス作用素とオイラー作用素の交換関係を利用した「Hobsonの公式」の導出、調和射影作用素の明示式(定理6.5.10)の提示、Hobsonの公式から導かれる同次調和多項式の特徴付け(定理6.5.19)と「Hecke等式」の導出、Rnの第n軸周りの回転で不変な球面調和関数は「帯球調和関数」と呼ばれ、斉次なものは1次元でありその基底として「超球多項式」が出現すること(定理7.3.8)やL2(Rn)のテンソル積分解の動径部分から「ラゲール多項式」が出現することの解説、Funk-Heckeの素晴らしい積分公式(定理8.1.3)の解説、などを挙げることができる。超幾何関数、特にヤコビ多項式やその特例であるゲーゲンバウアーの多項式(超球多項式)とその仲間たちが関係してくる所がこの理論の興味深く面白い所だろう。

リー群の等質空間の範例であるSn-1=SO(n,R)/SO(n-1,R)やH=SL(2,R)/SO(2,R)の上での調和解析、(コンパクト及び非コンパクト群の代表的な例といえる)これらのリー群のユニタリ表現に現れる興味深く個性的なL2空間、更に解析学に彩を添える古典的な特殊関数(超幾何関数、ヤコビ多項式とその仲間たち、ベッセル関数、など)の理論との神秘的ともいえる交流など、球面調和関数を中心に据えそれらが美しく交錯する様を色々な観点から描写する本書は数学が好きな方ならばぜひ読んでみたい書であろう。値段が少し高いのが玉に瑕であるが、お薦めの一冊と言える。

【追記: 2018.8.31】
 本書を読みながら、リー群の表現論と等質空間上の調和解析の面白さを教えられた山内・杉浦著『 連続群論入門 』と岡本清郷著『 フーリエ解析の展望 』の二冊が「優れた入門書である」ことを再認識させられた。興味がある方々は、これらの書のカスタマーレビューを併せてご覧頂きたいと思う。