ただし、ペアノの公理系における通常のお作法では、
足し算 + を定義するときの(再帰的定義の)出発点は

n + "0" := n

とするのが伝統的な習わしになっているので、普通は "0" はいわゆるゼロになる。
このことは、そもそも "0" という記号を使っていることからもお察しである。

ttps://en.wikipedia.org/wiki/Peano_axioms
> Addition is a function that maps two natural numbers (two elements of N) to another one. It is defined recursively as:
> a+0=a,     (1)
> a+S(b)=S(a+b) (2)

wikipedia の記述でも、(1) の定義の仕方を採用しているので、wikipedia でも "0" はゼロとなる。

なぜイチから始めないのかというと、ペアノの公理系における通常の実装方法では、"0" = φ と定義するし、
後者関数 suc は suc(x) = x∪{x} と定義するからである。この実装のもとでは、各自然数は集合として
そのまんま「有限順序数」になっている。一方で、順序数同士の間には、順序数専用の足し算が予め定義されている
(ペアノの公理系とは無関係に)。ここでは、順序数同士の足し算を # と書くことにする。"0" = φ だったから、
順序数と見たときの "0" は、順序数の足し算 # に関して紛れもないゼロになっていて、他の有限順序数 n に対して

n # φ = n

が常に成り立つ。すなわち、n # "0" = n が成り立つ。よって、"0" = φ, suc(x)=x∪{x} という実装のもとでは、
自然数の足し算 + を定義するときの(再帰的定義の)出発点は

n + "0" := n

として定義するするのが最も自然なのである。