たけしの座頭市は、座頭市というタイトルがついてるけど、実際は座頭市じゃないのよね
実際は、北野武のオリジナルチャンバラ映画。それ以外の何物でもない
オリジナルである勝新太郎の座頭市を、土台はそのままで北野武風に変化させて作り替えたのではなく、
オリジナル座頭市を完全に叩き壊し、まったく新しい別物の娯楽チャンバラ映画を作ったんだ
だから「武の座頭市はオリジナルの座頭市と比較してうんぬんかんぬん〜」なんていうレベルを超えてしまっている
あんだけ変えちゃえば、「これをカツシンの座頭市と比較するとか馬鹿じゃねえの?」って武に笑われるだけ
実は市はメクラじゃなくて…なんてことまでやったんだから、
どう考えてもこれはカツシンの座頭市とは別物だと言うしかない

まっとうにやったらカツシンの座頭市のイメージは打ち崩せないもん
まっとうにやったらカツシンのチャンバラ(殺陣)に勝てるわけもないもん
だからああいうものを作った。武は利口な人だ

あの仇討ち姉弟に仇討ちさえさせてあげないんだからね
市がぜ〜んぶやっちゃうんだから
人間ドラマやストーリーの整合性より、とにかくチャンバラ!見た目に分かりやすい面白さ
頭からっぽにしてそれを愉しみなよという、そういう映画だ。文字通りのチャンバラ映画だ
浪人(用心棒)の妻なんてのが出てきて、病弱で、夫婦愛がなんたら、とか、
一応それらしいことやってるけど、実は彼女は存在そのものに意味を与えられてない
でもそれでいいんだよ
市からしてからっぽなんだから。ひたすら空虚な殺し屋というだけの存在で、
中身や背景を持つこと自体を拒絶してるんだから
武が目指し、こだわったのは北野武オリジナル娯楽チャンバラ映画を作ること。その一点なんだ
そしてそれは成功した