碧巌録(へきがんろく) 第22則? 雪峰鼈鼻蛇(せっぽう べつびだ)   
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挙(こ)す

雪峰義存とその門下生である長慶慧稜、雲門文偃、玄沙師備という4人の有名な禅師が登場する。

本則
 
雪峰義存禅師、衆に示して云く、「南山(雪峰山)に一条の鼈鼻蛇(べつびだ:鼻のひしゃげた毒蛇)あり。汝等諸人(なんじらしょにん)、切に須(すべか)らく よく看(み)るべし。」
長慶云く、「今日堂中、大(たしか)に人の喪身失命するあり」。

修業僧、玄沙師備禅師に挙似(こじ)す。
玄沙云く、「須(すべか)らくこれ稜兄にして始めて得べし。然(しか)もかくの如くなりと雖(いえど)も、我は即ち不恁麼(ふいんも)」。

僧云く、「和尚そもさん」。
玄沙云く、「南山を用いて何かせん」。

雲門文偃 (そりゃ!出たぞ!) 柱杖(しゅじょう)をもって雪峰の面前に付き付けて怕(おそ)るる勢いをなす。
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本則

雪峰義存禅師がある時、大衆に示して言った、「この雪峰山には一匹の毒蛇がおるぞ。お前さん達、その毒蛇に呑み込まれないよう気を付けるが良い。」
すると長慶が進み出て言った、「いや、たしかに堂中の雲水達はその毒に当てられて一人も生きていませんよ」。
ところがその時側にいた僧にはこの問答の意味が分からなかったらしく、玄沙師備禅師にその話をした。
玄沙はそれを聞くと言った、「なるほど、さすがに慧稜兄だ。彼だからそういう答えができた。しかし、わしだったらそうは言わんな」。
僧は言った、「和尚だったらどう言われるのですか?」。
玄沙は言った、「その蛇は何も南山(雪峰山)だけにいるわけじゃない」。
雪峰と長慶が交わしていた問答を聞いていた雲門はいきなり柱杖を雪峰の面前に投げ出し、「そりゃ、出たぞ!」とぶるぶる震えていかにも恐ろしいといった様子をして見せた。

⇒ 毒蛇と言えば、マムシか、ハブか。 中国では どう言うのだろうか。 インドでは、コブラだろう。
  この毒蛇をよく見よ、という。
  お寺の奥座敷に巣くう毒蛇は、佛か。
  ほとけ とは、如。
  如とは、如来。
  如来とは、佛。
  佛 とは、真理さとり。
  毒蛇とは、つまり、真理。

  真理とは、一の如し、である。