碧巌録(へきがんろく) 第20則?   龍牙西来意りゅうげせいらいい)

挙こす。

龍牙りゅうげ、翠微すいびに問う、如何いかなるか是これ祖師西来意そしせいらいい。

微び云いわく、我が為ために禅板ぜんばんを過すごし来れ。

牙げ、禅板を過して翠微に与あたう。

微、説得して便すなわち打つ。

牙云く、打つことは即ち打つに任まかす。要は且かつ祖師西来意無し。

牙又また臨済りんざいに問う、如何なるか是れ祖師西来意。

済ざい云く、我が為めに蒲団ふとんを過し来れ。

牙蒲団を取って、臨済に過与かよす。

済説得して便ち打つ。

牙云く、打つことは即ち打つに任す。要ようは且つ祖師西来意無し。
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本則:
龍牙居遁禅師、翠微無学禅師に問う、「如何(いか)なるかこれ祖師西来意?」。
微云く、「我がために禅版を過(も)ち来たれ」。
牙、禅版を過(わた)して翠微に与う。
微、接得してすなわち打つ。
牙云く、「打つことは即ち打つに任す、要且つ祖師西来意なし」。
牙また臨済に問う、「如何なるかこれ祖師西来意?」。
済云く、「我がために蒲団(坐禅の時に尻に敷く坐蒲)を過(も)ち来たれ」。
牙、蒲団を取って臨済に過(わた)与す。
済、接得してすなわち打つ。
牙云く、「打つことは即ち打つに任す、要且つ(結局)祖師西来意なし」。
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本則:
龍牙が翠微に聞いた、「禅の本質とはどのようなものでしょうか?」。
翠微は言った、「私にそこの禅版取ってくれんか」。
龍牙は禅版を取って渡した。翠微は、禅版を受け取ったとたんに龍牙の横っつらをぶんなぐった。
龍牙は言った、「なぐるのはあなたの勝手です。しかし、そこには禅の本質はありませんね」。
その後龍牙は河北の臨済を訪ね臨済に同じことを聞いた、「禅の本質とはどのようなものでしょうか?」。
臨済は言った、「私にそこの坐蒲(蒲団)を取ってくれんか」。
龍牙は坐蒲を取って臨済に渡した。臨済は坐蒲を受け取ったとたんに龍牙の横っつらをぶんなぐった。
龍牙は言った、「なぐるのはあなたの勝手です。しかし、そこには禅の本質はありませんね」。