>>182

本則

粛宗皇帝が慧忠国師に聞いた、「国師の死後、こうして欲しいというものが何かありますか?」。
国師は言った、「そうじゃな、老僧のためにひとつ縫い目に無い塔を作って下さい」。
 
帝は言った、「国師よ、その塔は五輪の塔ですか、それとも卵塔でしょうか? 
 
具体的に塔の様子を図面などで示して下さい」。
国師はしばらく沈黙した後言った、「分かりましたか?」。
 
帝は言った、「いえ、分かりません」。
国師は言った、「私の嗣法の弟子に耽源(たんげん)という者がおります。彼はこの事を良く分かっています。
 
彼を詔して聞いて下さい」。
 
国師が遷化した後、帝は耽源を詔して、この事について聞いた。
耽源は言った、「湘の南、潭の北」。
 
雪竇は著語して言った、「片手だけでは音も出ない。中に黄金があって一国に充ちている」。
雪竇は著語して言った、「山形(さんぎょう)のシュ杖子(しゅじょうす)。無影樹下の合同船」。
 
雪竇は著語して言った、「海は安らかで河は清らかである(天下泰平)。
 
この極楽世界の瑠璃殿上(悟りの世界)にはあなたの知り合いは誰もいない。」。
雪竇は著語して言った、「話はこれでおしまい」。