つづき

代数的整数をこのように定義する背景には次のような考え方がある[1]。まず、有理数に対する整数のように、代数的数全体の集合の中で「整数の集合」S が何らかの方法で定義できたとする。すると S は次の性質を持っているはずである。
(S1) S は加減算と乗算で閉じている。
(S2) S の元の任意の共役は S に含まれる。
(S3) 有理整数はすべて S に属し、S に含まれる有理数は有理整数のみである。
(S4) S は以上の性質を持つ集合の中でなるべく大きいものである。
このような性質を持つ集合 S は実は代数的整数の集合と一致する。実際、S の任意の元 α に対してその有理数体上の最小多項式 f を取ってみる。f の係数は α の共役達の基本対称式であるから、(S2)と(S1)よりこれは S に含まれる。f の係数は有理数であるから、(S3)よりこれらは有理整数である。よって f は有理整数係数のモニック多項式であるから α は代数的整数である。したがって S は代数的整数の集合に含まれる。代数的整数の集合は(S1)〜(S3)を満たす集合であるので、(S4)により S は代数的整数の集合に一致する。

代数的整数とならない例
P (x) をモニックでない整数係数原始多項式で、かつ Q 上既約であるとする。このとき P (x) の根は代数的整数とならない。(ここで原始多項式とは、係数の最大公約数が 1 であるような多項式のことを言う。これは「係数が互いに素であるような多項式」よりも弱い条件である。)

性質
二つの代数的整数の和、差、積もまた代数的整数となる。ただし一般に商は代数的整数とならない。これは代数的整数 p, q とその積 pq について、それらを根とするモニック多項式の次数を比べると、一般に pq のほうが高くなるためである。このことは終結式を求めて因数分解することで分かる。例として、代数的整数 x, y がモニック多項式 x2 − x − 1 = 0, y3 − y − 1 = 0 を満たすとし、加えて積を z = xy (⇔ z − xy = 0) とおく。これらの左辺の多項式から終結式を用いて x と y を消去することで、z に関するモニック多項式 z6 − 3z4 − 4z3 + z2 + z − 1 が得られる。この多項式は既約であり、z = xy を根に持つ。(xy は多項式 z − xy, x2 − x − 1 に対して y, z を定数とみたときの終結式となっている。このことは「与えられた多項式 f, g の終結式は f, g が生成するイデアルに属する」ことからも確認できる。)

https://en.wikipedia.org/wiki/Algebraic_integer
Algebraic integer
(引用終り)
以上