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つづき

Q2. じゃあ, 宇宙を取り替えるってどういう意味?
A2. 宇宙際 Teichm¨uller 理論では, 環構造そのものを変形します. スキーム論とは環論だと思う
と, by definition でスキーム論が通用しない局面がしばしば出てくるということです. 一方のス
キーム論での操作や基点などを他方のスキーム論にもちこむことはできません. 一方での恣意
的なラベル付けが他方では通用しない, それは “宇宙を取り替える” ということではないか, と
いう意味で使っています. 厳密な意味での Grothendieck 宇宙を取り替えると考えてもいいです
し, 数学基礎論的に厳密な観点からはあくまで 1 つの Grothendieck 宇宙の中で考えてその中に
別々にスキーム論があって, それを取り替えることを “宇宙を取り替える” という言葉で表現し
ていると考えてもいいです. また, その新しい幾何学ではそこから生じる不定性を統制する・剛
性 (rigidity) で抑える・(1 の冪根の p 進 log をとると 0 になる等の) 適当な操作で消す・(不定性
のため像がはっきりしないがある入れ物には入っていることは分かるなどにより) 見積もること
などや, ある不定性と他の不定性が連動している (synchronize) ことを用いることなどが大事に
なってきます. それにはそもそも不定性の存在に気付かないといけないわけですが, 不定性の存
在を明確に意識するのにも役に立つ考え方です. “その新しい幾何学” と書きましたが, 従来の
幾何学では (多項式写像であれ連続写像であれ可微分写像であれ) 環構造と整合的な射 (環付き
トポスの射) を考えるのが幾何学であるという視点に立つならば, それは幾何学という枠組みす
ら超えているかもしれません.

つづく