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つづき

多様体上の曲線
R の開区間 I = (a, b) から Cs 級多様体 M への Cr 級写像

φ: I → M
のことを、 Cr 級曲線 (Cr-curve) という (0 ? r ? s)。

{ φ(t) ∈ M | t ∈ I} という点の集合を曲線というのではなく、写像 φ を曲線というのである。なお、φ の変数 t を媒介変数という。

a ? c < d ? b
とする。φ が 開区間 I = (a,b) で定義された Cr 級曲線であるとき、 I に含まれる閉区間 [c,d] や 半開区間 [c,d), (c,d] に φ の定義域を制限して得られる写像も Cr 級曲線という。

歴史
多様体の歴史はゲッティンゲンで行われたリーマンの講演に始まる。

多様体論は、ロバチェフスキーの双曲幾何学によって始まった非ユークリッド幾何学やガウスの曲面論を背景として様々な幾何学を統一し、 n 次元の幾何学へと飛躍させた。発見当初はカント哲学に打撃を与えた非ユークリッド幾何学も多様体論の一例でしかなくなってしまった。

リーマンがゲッティンゲン大学の私講師に就任するために行った講演『幾何学の基礎に関する仮説について』の中で「何重にも拡がったもの」と表現した概念が n 次元多様体のもとになり n 次元の幾何学に関する研究が始まった。この講演を聴いていたガウスがその着想に夢中になり、(ガウスは普段はあまり表立って他人を褒めることはなかったが、)リーマンの着想がいかに素晴らしいかを同僚に語り続けたり、帰り道にうわの空で道端の溝に落ちたりしたと言われている。

年表
1826年『平行線公準の厳密な証明』(ロバチェフスキー)
1827年『曲面の研究』(ガウス)
1829年『幾何学の新原理並びに平行線の完全な理論』(ロバチェフスキー)
1854年6月10日『幾何学の基礎に関する仮説について』(リーマン)
1872年エルランゲン目録(クライン)
1895年『位置解析』(アンリ・ポアンカレ)
1916年一般相対性理論(アルベルト・アインシュタイン)
1936年『微分可能多様体』(ハスラー・ホイットニー)

つづく