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つづき

⑦ φj*φ-1i:φi(Ui∩Uj)→φj(Ui∩Uj) は正則関数
上によって、X には各点に対して座標が定まったわけです。局所的には座標が定まっていますが、それが全体的に「うまくいっている」かどうか考える必要があります。

共通部分を持つ開被覆 Ui,Uj を考えたときに、Ui,Uj にはそれぞれ異なる座標近傍系 φi,φj が定まっています。つまり、共通部分 Ui∩Uj には φi,φj という2通りの座標近傍系が定まっているわけですね。リーマン面の条件⑦では、これらの座標近傍系の間の「整合性」を要請しています。

この整合性についてより詳しく説明したいと思います。Ui∩Uj を φi,φj によって写したものをそれぞれ φi(Ui∩Uj),φj(Ui∩Uj) と書くことにします。これらはどちらも C の開集合で、Ui∩Uj と同相です。

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よって、次のような合成写像を考えることができます。φi の逆写像 φ-1i によって φi(Ui∩Uj) を Ui∩Uj に戻します。さらに、φj によって Ui∩Uj を φi(Ui∩Uj) に写します。この合成写像を
φj*φ-1i:φi(Ui∩Uj)-→-φ-1iUi∩Uj-→φjφj(Ui∩Uj)
とします。

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構成からわかるように、φj*φ-1i は C の開集合から C の開集合への写像となっていますね。つまり、単なる複素関数になります。

条件⑦では、複素関数 φj*φ-1i が正則であることを要請しているというわけです。

リーマン面と多様体の関係
多様体のことを知っている人は、リーマン面の定義が多様体の定義に似ていることに気づいたと思います。

実際、上の定義で C となっているところを Rn に置き換えて、「正則関数」のところを「連続関数(あるいは無限回微分可能)」と置き換えると「n 次元多様体(あるいは n 次元可微分多様体)」の定義そのものになります。C は R2 だと思えて、正則関数は連続関数なので、リーマン面は2次元の多様体となります。

一方、C のところを Cn に置き換えると、これは n 次元複素多様体の定義となります。リーマン面は1次元複素多様体だということができます。

つづく