>>252
つづき

9 タイヒミュラー空間の定義
今回の目標はとにかく,タ空間を定義することにある.最初に前回の補足として例外型・双曲型
リーマン面について解説したあと,言葉の準備(写像の持ち上げ,リーマン面上の擬等角写像)をし
て,定義に取り掛かる.定義の意味については,次回に.
以下,S, R をリーマン面とする.

9.2 写像の持ち上げ

9.3 リーマン面間の擬等角写像の定義

9.5 タイヒミュラー空間の定義
いよいよ,「リーマン面 S のタイヒミュラー空間」を定義する.とりあえず,形式的に定義を済ま
せてしまおう.
S とそのアトラス A を固定する.つぎに,別のリーマン面 R で,S からの向きを保つ擬等角写像
f : S → R が存在するようなもの全体を考える.もう少し形式的に,そのような f と R のペアとし
て (R, f) の形のもの全体を考えるのである.この写像 f をマーキング (marking) と呼び,(R, f) を
マークされたリーマン面 (marked Riemann surface) と呼ぶ.
その全体の集合に,次の同値関係を考えよう:

このとき,同値類の集合
T(S) = {(R, f)}/^T
を S のタイヒミュラー空間 (Teichm¨uller space) と呼ぶ.
このように定義を与えられても,大概の人にとっては意味不明であろう.たとえば,次のような疑
問点が生じる:

つづく