在日米軍は日本防衛に直接関与しない−米政府の外交文書でわかった
   ◆ ジャーナリスト・春名幹男/安倍晋三首相、日米安保条約
週刊文春(2015/12/03), 頁:31
http://am eblo.jp/souldenight/entry-12100571655.html
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一九七一年に当時のジョンソン国務長官代行がニクソン大統領に提出したメモ。
「そこには、『在日米軍は日本本土を防衛するために駐留しているわけではなく、
韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のために駐留している』と、書かれていました」
 続くフォード政権で作成された統合参謀本部の文書には、こう明記されている。〈在日米軍および基地は日本の防衛に直接関与しない〉…

 春名氏が入手した機密文書のひとつに、ニクソン政権当時の六九年に米国の情報機関がNSC(国家安全保障会議)に
提出した「日米安全保障関係の見通し」と題したものがある。この文書は反安保・反基地の機運が盛り上がっていた当時の日本国内の政治情勢を次のように分析する。
・六九年中に沖縄返還の時期で合意を得られなければ、佐藤栄作首相(当時)が批判に晒されて、辞任に追い込まれかねない。
・その場合の後任候補は、米国に対して、より自立的で、中国に対してより柔軟な態度を示すだろう。誰が後継首相になっても、安保問題で米国が日本と交渉するのは確実に困難になる。

「この文書はNSCの議論で重視され、沖縄返還の実現へと政権内の流れをつくることになります。
ニクソン政権で国家安全保障担当補佐官だったキッシンジャーは、沖縄返還について
『われわれが交渉を拒否すれば、現実的な問題として、基地をすべて失うことにつながる』と回顧録に残していますが、
その意図は明らかです。親米的な佐藤政権を延命させることで、沖縄の米軍基地を半永久的に利用する狙いがあった」
 日本、中国、台湾が領有権をめぐり争う尖閣諸島についても米国のスタンスは、実はこの当時から変わっていない。
沖縄返還まで尖閣諸島に施政権を有していた米国は、七一年の沖縄返還協定で、施政権の日本への移転を認めた。
「しかし、主権については一切触れていません。当時駐日米国大使だったマイヤーは回想録で、
『そんな巧みな立場によって、三つの当事国に嫌われることなく、今後何年も続きそうな論議に米国は不関与の立場を保障された』と記しているのです」…