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【欅ちゃん小説】小林マネージャーのキセキ

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0001名無しって、書けない?(大阪府)
垢版 |
2017/11/06(月) 21:16:11.85ID:8X5MpODB0
(第一章)

ドライヤーのスイッチを切り、洗面所から部屋に戻ると、この日六回目の着信バイブがベッドを揺らしていた。
そんなことには気も留めず、小林由依は自宅用のポーチから化粧水と乳液を取り出した。
化粧水を顔につけてから、乳液の容器を逆さまにした。出なかった。
その間にもバイブは鳴り続け、由依の思考を邪魔していた。
「乳液、乳液…」と独り言で振動を打ち消しながら、物置のなかを探した。
白地に灰色の水玉模様がプリントされたクリスマスプレゼントが無造作に置いてあった。
黒いテープを解くと、新品の乳液が出てきた。去年のクリスマスプレゼントが今になって開封された。

乳液を塗り終えると、やっと由依は電話に出た。
「小林、ブログ書いたか?」
「あ、風呂入ってました。」
「おい、もう日付変わってるぞ。誕生日なんだからブログ書けよ」
「すいません。すぐやります」
「朝までには送って来いよ」
「はい」

電話の相手は、通称「GM」。メンバーのスケジュール管理や外部との交渉、その他諸々の雑用をこなす役割だ。
まあ、要はただのマネージャーだ。細かい性格だからマネージャーには向いているのだろうが、由依は嫌いだった。
人に催促されて仕事をするのは嫌だったし、
第一なぜ誕生日だからといってブログを書かなければならないのか分からなかった。
今頃、世間の人は台風に面食らっている。そんな状況で浮かれた文章など読みたくもないだろう。

由依は再びスマホを手に取り、携帯ゲームを始めた。
そのゲームに自分が出てくることに、まだ馴れなかった。自分のカードを見るたびにドキドキする。
織田奈那のカードを引き当てたところで、画面が止まった。
次第に画面が強く光り始め、由依は眩しさで気を失った。
0002名無しって、書けない?(大阪府)
垢版 |
2017/11/06(月) 21:17:28.20ID:8X5MpODB0
(第二章)

「由依、聞いてる?」
由依はヘアアイロンを握っていた。前方の鏡には、自分の他に、ロングヘアに隠れた横顔が映っていた。
見回したところ、楽屋のようだった。
「由依、聞いてる?毛先、もう少し巻いて」
その人は言った。その瞳に鋭い眼光を感じた。
「あれ、織田?」
「呼び捨て?誰に口聞いてんの」
「ごめんなさい…」
「とにかく早く髪巻いて。時間無いから」
「ああ…はい」

「織田さーん、時間です」
「はーい、今行きます」
髪を二、三回巻くと、織田は、「サンキュー、もういいよ」と親指を立てて楽屋から出ていった。

入れ違いでやって来たスタッフは、小さめのダンボールを抱えていた。側面にマジックでファンレターと書いてある。
「小林、これチェックしといて。危険物があるかもしれないから」
「ああ、わかりました」
由依は状況を掴めていなかったが、言われるがままにダンボールを開封した。

ファンレターに目を通していると、「お疲れ様でーす」という声が廊下から漏れてきた。
織田が楽屋に戻ってきた。
織田は机のボトルを手に取り、残業から帰ってきたサラリーマンのようにソファーへもたれ掛かった。
「あの…お疲れ様です」
由依は声をかけた。織田はチラッと目線を上げて、「ああ」とだけ答えた。
「あの…ファンレター読みますか?」
「どうせ大したことないだろ」
「何か女性のファンが多いですね」
「まあ、俺は男だからね」

由依は改めて織田を見た。
いつも通りの織田で、特に変わったところは見当たらない。
黒スーツに、黒い長髪、男に見えなくもないが、その姿は何処をとっても織田であった。
由依は不安になった。もしかしたら自分も男かもしれない。
そう思うと、自然に自分の胸へ手が行っていた。よかった。ちゃんとある。
「ねえ、何やってんの」
織田が半笑いで由依を見つめている。
「あ、いや…」
「まあいいや、今日ご飯行かない?」
「今からですか?」
「予定ある?」
「いや、多分ないと思いますけど」
「じゃ、行こう」
0003名無しって、書けない?(大阪府)
垢版 |
2017/11/06(月) 21:18:29.22ID:8X5MpODB0
(第三章)

一時間後、由依はイタリアンレストランで黒板のメニューを見ていた。
「由依、決まった?」
「はい、ペペロンチーノにします」
織田が店員を呼んだ。
「ご注文お決まりでしょうか」
「えっと、ペペロンチーノと、ボロネーゼ。あと、あれね」
「はい、かしこまりました」
織田が店員にウィンクをした。

「こんなオシャレなお店知ってたんですね」
「まあね」
織田はちっともこちらを向いて話してくれない。
それもそのはず、織田とは声のトーンも、テンポも、考え方もまるっきり違っていた。
由依はおしぼりを何度も巻き直して時間を潰した。

ペペロンチーノは美味しかった。
ボロネーゼも美味しそうに見え、しばらく見ていると、織田が頬をふくらませたまま、「いる?」と聞いた。
由依は首を横に振った。
それでも織田はパスタを巻きつけ由依の口元に差し出した。
「ほら、あーん」
周りのテーブルを見た。従業員が動いているだけで、客はいない。
由依は甘えた。

「あ、ソース口についてる。取ってあげるよ」
「自分でやります」そう言おうとした時、急に真っ暗になった。厨房の奥から、揺れた炎が近づいてきた。
唇を撫でる柔らかい感触が何であるかを判断するに、瞳孔の働きは追いつかず、
織田の唇の赤さがミートソースによるものか、由依の口紅によるものかを判断するに、炎の赤さが邪魔をした。
0004名無しって、書けない?(大阪府)
垢版 |
2017/11/06(月) 21:19:36.90ID:8X5MpODB0
(第四章)

由依は、並木道のタイルを高鳴らせて歩いた。葉っぱが空からひらひらと舞い降りていた。
口の奥は、唐辛子とクリームの匂いが混ざっている。

急に、織田が止まった。
「何だよ、さっきから!」
由依は驚いて横を向いた。調子に乗りすぎたかもしれないと思った。
織田は後ろを振り返って仁王立ちしていた。
「ちっ、何だ男かよ」
由依が声のする方を振り返ると、すでにウォレットチェーンの金属音が闇の中に消えていた。
織田が由依の手を握った。織田の手は冷たい。
「こうしとけばさ、カップルに見えるかな?変なやつに絡まれんの嫌だろ」
「うん」

落ち葉を踏みつけ歩き始めると、魔法が解けた。
0005名無しって、書けない?(大阪府)
垢版 |
2017/11/06(月) 21:20:40.42ID:8X5MpODB0
(最終章)

右手が震えていた。また、マネージャーから着信があった。
「小林です」
「どう、ブログ進んでる」
「もう出来そうです」
「オッケー、じゃ頼むぞ」

電話が切れた。由依はキッチンへ向かい、インスタントコーヒーを淹れた。
夜の底が浅くなりゆくのを感じながら、静かにブログの文字を打ち始めた。

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ゲームってさ、
始めたばっかりのときって
アイテムとかいっぱいもらえるし
どんどんステージクリアできるし
体力無限にあって全然減らないからさ
寝る前に始めちゃうと全然寝れなくなるのよね

まさに今、欅のキセキがそれ。
気づいたら朝4時だった←


小林由依です♪

こんばんは

(中略)

日付変わって1番最初にメールくれたのは…

オダナナでした笑

----小林由依 公式ブログ『17→18☆彡』より一部抜粋----
http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/diary/detail/12161?ima=0000&;cd=member
0006名無しって、書けない?(大阪府)
垢版 |
2017/11/06(月) 21:21:02.71ID:8X5MpODB0
おわり〜
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