>>271
つづき

スキームを通じて圏論的に定義される様々な概念は大きな威力を発揮するが、その一方で、古典的な代数幾何においては点とみなされなかった既約部分多様体のようなものまでがスペクトルの「点」になってしまう。
このためヴェイユ・ザリスキ流の代数幾何学(これ自体大幅な形式化によって前の世代の牧歌的なイタリア流代数幾何に引導を渡すものだったのだが)を習得して研究していた同時代の学者たちからは戸惑いのこもった反発を受けた。

スキームの概念の一般性は、最初は批判された。幾何学的な解釈を直接持たないので除かれたスキームもあり、これらがスキームの概念の把握を困難にしていた。
しかしながら、任意のスキームを考えるとスキームの圏はより良い振る舞いをもつようになる。さらに、例えばモジュライ空間のように、自然な見方、考え方が「非古典的」なスキームへと導いていった。
多様体ではないこれらスキーム(単純に多様体から構成することができないスキーム)の出現は、古典的なことばで提出可能であった問題に対しても、この問題の新しい基礎付けが緩やかに受け入れられていった。

以上