「あほう鳥」

「慎吾のバカ!! もう知らない!!!」
アイツの言葉が頭の中でずっと、ずっと、一日中、こだましていた...
俺、坂下慎吾は今日、彼女と喧嘩しました。

喧嘩の理由は、俺の浮気。
浮気そのものは、これまでも何度かしたことがあったが、ああやって怒鳴られたのも
頬を叩かれたのも初めてだった。

浮気がばれる二、三日前は、
「きっとさ、世界には、決められたレールってものがあって、あたしたちはその上を
歩いているだけなんだよ」
昼休みの学食。俺の彼女である、目の前に座る女は、割り箸を
割りながら、いきなりそんなことを言い出した。

「だけど、あたしたちはそんなものは見えないし、そのレールから無理やり外されることも
出来ないし、外れたと思っていても、実はまだレールの上だったりしてさ」
そう言って素うどんを啜る彼女。

俺はあまりの訳の分からなさに、少し奮発したカレーライスに手を付けられずにいた。
「そしてその人のレールは、至る所で交差したりするんだよ。そうして人と人は出会うわけ」と
いう彼女に「...悪いけども、お前が何が言いたいのか、俺にはサッパリわからん!」

「だからさ…」彼女は、うどんを食べる仕草を中断し、俺の目を見ながら言ってきた。
「きっと、あたしたちは、出会うべくして出会ったんだよ」
そう言って、彼女はニコリと笑い転げて言い続ける。

「いわば、運命ってやつかな?! ...運命の人。赤い糸。呼び方は色々あるけど、
多分、あたしにとってあんたは、そういう人なんだと思うよ!」

「運命か、… ジャジャジャジャーンか... そんな大それたもんじゃねぇと
思うぞ! 俺は…」「それじゃあ、何?! 偶然?!」
少し不貞腐れたような顔で、詰問してくる彼女!

「その割には、出来過ぎてるだろ…」「じゃあ、何よ!」
「決まってんだろうが!」俺は、笑みを浮かべて言葉を重ねた。
「必然!」キョトンとした顔つきで彼女「いゃだあぁー」

ワハハハハ わははははと互いに笑い転げる俺たちは、バカカップルのアホウドリだった......
...俺の浮気がバレる、二、三日前までは.........