雅樹ちゃん誘拐事件の本山茂久は処刑のとき、完全に気が狂って舎房の鉄格子に
しがみつき、特警にかみつき、暴れ、吠えまくり、ロープに吊るされても、
あがき、もだえ、ついに主ロープが切れ、補助ロープでかろうじて(人を殺すのに、
かろうじてもないもんだが)処刑された。
顔は醜くふくらみ、目はバセドー氏病のごとく飛び出し、白目が今にもこぼれんばかりに
噴き出て、首筋から顎にかけてはざくろのようにただれ、舌がこんなにもながいものかと
思うほど、口から血にまみれて長く長く垂れ下がっていた。そのときには、すでに何人もの
死水を取り、何体もの屍を清め、後始末をしていた俺でさえ、腰が抜け、危くこっちまで
目玉むいて逝きそうになったが、そのとき一緒に掃夫をやっていた尊属殺しの五十嵐正秀
などは、初めてのこともあって、へなへなと腰を抜かし、自分まで小便をもらす始末であった。

「そして死刑は執行された」合田士郎・著 より