そこで助けの手を差し伸べてくれたのが、読むだけでなく、買って読んでくれたあなた方だったのです。
 ミリオンセラーには縁はなかったが、出版社の倉庫に返品の山が築かれない程度には本を買ってくれる読者に恵まれたのは、私にとって最良のサポートになった。
 組織に属したことは一度としてないので、作品を売る以外に収入の道はない。それでも五十年にわたって書きつづけてこれたのは、私の作品を買って読むことで、私が仕事をつづける環境を整てくれた読者がいたからである。
(中略)
 作品を買ってそれを読むという行為は、それを書いた著者に、次の作品を書く機会までも与えてくれることになるのですから

塩野七生 ギリシア人の物語3 あとがきより

やっぱりこういう文章を読むとさ、書物に関してだけは「断」はあまりない方がいいような気がする。
誰も彼もが図書館で借りて読めばいいとなったとき、日本の文化は滅びるんじゃない?
まあ、この作品自体が塩野史上、最低につまんなかったという事実は置いておくが、それでも来年の年末から毎年一冊の習慣がなくなるのは寂しいわ