親父がバイオレンスな人だったので
お母さんはよく泣いていた。
6歳くらいの時、「今日はお出かけするよ」と3歳の弟とおいらを連れて
日に2本しか運行しないバスで1時間かかる最寄り駅までいき、
いつもなら運賃だけですむ急行列車なのに、その日に限って
運賃の他に別料金がかかる特急列車に乗せてもらった。
しかも、今まで乗ったことのない2階建て車輌で、とても嬉しかったことを
覚えている。
「ねえ、どこにいくの?」
と列車内でお母さんに尋ねた。
お母さんは、「このまま3人で暮らそうか」と言って静かに
泣き始めた。
もう一度尋ねた。
「ねえー、どこにいくのー?」
「○○百貨店に行ってお買い物するのよ」
「ふーん」
で、百貨店に着いてレストランでお昼ご飯を食べてから、
お母さんは百貨店屋上のアミューズメントスペースで
おいらに「二人で仲良く遊んでてね」と三〇〇〇円渡された。
お母さん、あのあと怖い兄ちゃん達にお金とられたから
遊べなかったんだよ。