ttps://www.newsweekjapan.jp/reizei/2021/10/2-10.php

この真鍋博士の受賞に関しては、日本でも大きく報じられているようですが、
その報道について少々の違和感を覚えたのも事実です。2点ほど考えてみたいと思います。

1つは、受賞の報道は例年以上に大きく取り上げられているのに、
対象となった温暖化研究に関する関心が、今ひとつ静かだということです。

その理由を考えてみたのですが、
1つには、たとえば過去の「ニュートリノの検出」といった未知のテーマですと、
日本の社会が持っている科学への好奇心が刺激されて話題になったわけですが、
温暖化理論はあまりに有名であるために人々の好奇心を刺激できなかったのかもしれません。

その一方で、温暖化理論に関しては今でも賛否両論があり、
また理論を受けて政策課題となった「カーボンゼロ」の実現方法についても、極めて政治的な対立があります。

温暖化理論の持つこうした政治的な側面は、
過去の受賞のように純粋な科学的好奇心から受賞の話題で盛り上がるには、ジャマだったのかもしれません。

2点目は、日本の気象学の伝統についての話題があまり出ないということです。

アメリカにおける気象学の発展に功績のある日本人は、真鍋博士だけではありません。
真鍋博士以上にアメリカで有名な存在として、藤田哲也博士(1920?1998)の存在があります。
藤田博士は、1953年に渡米後、シカゴ大学を拠点にトルネード(竜巻)について、
初めて本格的な研究を行い、アメリカにおける竜巻の「階級判定方法」を考案したことで知られています。