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1958年には米スクリップス海洋研究所のキーリング(Charles Keeling)氏らが
ハワイで大気中のCO2濃度の連続観測を開始しており,
当時既にCO2濃度の増加は実際の観測で明らかになりつつあった。

岡山大学教授で,気候モデル研究に取り組んできた野沢徹氏は
「CO2が増えた時に気候にどんな変化が起こるか,そのエッセンスを非常にうまく取り出した,
画期的な研究だった」と説明する。

1970年代以降,真鍋氏らは一次元だった気候モデルを三次元へと拡張。
さらに海洋の影響を加味した気候モデルも開発した。

また,ハッセルマン氏は同時期に,気候モデルのシミュレーション結果と
実際に起きた地球温暖化の観測結果を突き合わせ,
その温暖化が「人間の経済活動の影響が無ければ起こりえないものであったかどうか」
を判定する統計手法を開発した。

CO2の濃度上昇で温暖化が起こっており,そこには人間の行動が影響しているという見方は,
気候モデルや経済活動の影響を調べる統計手法の精度が高まるなかで,
研究者の間で次第に揺るがないものとなっていった。

このことが1988年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の設立や,
その後のさらに精緻な気候モデルの研究の原動力となった。
真鍋氏は1990年のIPCC第一次評価報告書の執筆責任者の1人となっている。