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コンピューター上で地球全体の気候をシミュレーションする「気候モデル」の計算プログラムは,
気候変動の問題を議論するうえで欠かせないものになっている。

二酸化炭素の排出量が今のペースで続くと100年後の地球環境はどうなるのか。
異常気象の発生にはどの程度人為的な経済活動が関係しているのか。
こうした問いに答えようとしても,全球規模の気候の変化を実際に実験することは不可能だ。

コンピューターの中にもう1つの地球環境を作りだし,
そこで様々な条件のシミュレーションを繰り返しながら観測結果と比較することで,
初めて私たちは気候変動を定量的に分析できるようになる。

真鍋氏は1964年に気候モデルの基礎を確立し,その後数十年をかけてモデルの発展に尽力してきた。
また,ハッセルマン氏は観測された地球温暖化が
人間の経済活動のせいで起こったのかどうかを評価する統計的手法を開発した。

気温は高度によって大きく変化する。地表の平均温度は15℃だ。
上空に行くほど空気の温度は下がるが,高度10000m以上の成層圏になると一定になり,
さらに上空では再び上昇に転じる。しかし1960年代当時,
どうしてこうした大気の温度分布が起こるのかはまだよくわかっていなかった。

真鍋氏らは1964年の論文で,大気が水平方向には均質だと仮定し,
地面から上空までの鉛直方向の温度分布を調べる気候モデルを考案した。
このモデルでは,太陽の熱や地面から放射された熱が大気の中で伝わる過程に加え,
大気の対流やCO2による熱の吸収などを計算に取り入れた。

その結果,真鍋氏らの気候モデルによるシミュレーション結果は
実際の大気の温度分布を正確に再現した。
さらに大気中の気体の成分を変えてシミュレーションを行うことで,
成層圏で上空ほど気温が高いのは,オゾンの太陽熱吸収が関わるためだと明らかにした。

また,真鍋氏らは1967年に大気中の二酸化炭素の濃度を変えたシミュレーションを行い,
CO2の濃度が2倍になると約2℃気温が上がることを示した。