>>165
「狂った果実」が画期的だったのは、格差社会のひずみをテーマにしていながらも、
底辺の者たちのミジメさが露骨に描かれていて、「何の救いもない」という点だ。

それまでの左翼たちが描いていた社会派映画だったら、
「底辺の者たちの方こそが社会の真実に目覚めていて、心に余裕があって堂々としていて、だから富裕層の者たちを見下す事ができている」
という描き方になるのが当たり前だった。

ところが、「狂った果実」に登場する底辺の者たちは、富裕層の金持ち学生たちに、口でも負けるし、暴力でも太刀打ちできない。
ありとあらゆる点で負けっ放しであって、ヤケッパチになって刃物を振り回す事でしか逆襲できない。

それまでの左翼映画で描かれてきた「左翼の理想とする堂々とした労働者」とは、まったく違っていた。
そして、こちらの方こそが真実の底辺社会を描いている。
それが衝撃的だった。