黒澤明 どん底
長屋で展開される人間模様の悲喜劇、
ユーモラスに転調するかと思えばまた絶望へ。
この映画にはあらゆることが詰まっている。
三井弘次や千秋実といった名脇役というイメージの役者が、
一世一代ともいえる演技をみせてくれるのも魅力。 >>199
3〜40年前なら子供でも感覚的に知っていた歴史の判断力も
ないようだから、もう少しおべんきょしてから見直してみな 外で揉み合うシーンで五十鈴さんの胸元が見えそうになるよね。 >>188,>>191
どうしようもない現実をあたらめて直視したのと、突発的な現実逃避による自殺。
これは、伏線として「あの世にいったら楽になれる」と諭されて亡くなった
鍛冶屋の妻の伏線も効いている。
そこで病気治療を越えて一気に楽になりたかったのでは。
さらに、突発的な死の報告によって、この映画の見せ場の一つである即興ライブが
中途で途切れ、最後の捨て台詞でブチッと切断されて終わる。
どん底という環境からして、どうしても救いようのないしみったれた結末になりがちな
ところを、この潔いまでに切断した終わり方ゆえにスタイリッシュとなる。
(あくまで俯瞰的視線に徹し、情を避けてニヒルな視線を交える方法)
さらに、ウソで固めて現実逃避している者同士なりの妙な連帯感が、ふっきれた
までに潔いあの即興的な音楽となる。
音楽は調和(ハーモニー)だ。
この調和が様々な境遇を経てどん底に辿り着いてここで生きざるをえない者たちの
互いの慰めとなる重要なファクターだ。
口では互いに冗談交じりに罵りあい、信用していないし自分も同じように信用されて
いないが、同じ社会的弱者として互いの傷をなめあう同族意識が心底にある。
それが即興的な音楽となって現れる。
どん底においてこれが彼等なりのストレスの発散であり唯一の救いとなっている。
だが、結果として誰がどん底を抜け出し希望通りになったか。
鍛冶屋の妻は、「あの世へ行けば楽になる」と諭されたとたん、
楽になるならもう少しこの世にいたい、と執着して意に反して亡くなった。
どん底を一番抜け出す意欲のあったその夫は、妻の死で気が触れた。
将来に希望を見出した捨吉も、どん底という環境で培われた疑心(女の裏切)
によってようやく芽生えた信頼も覆された。
ウソでもいい、ただきちんと話を聞いてくれ、同上して慰めてほしかった夜鷹は
遍路によって一応満たされた。(が、現状は変わっていない。)
最初から変化を諦めていた者は当然、現状維持だ。
すると、突発的に死ぬことで現状から「楽になれた」役者が一番希望がかなった
(少なくとも自分の意志で現実を変えた)のではないのか。
そう考えると、死ぬことでしか現状を抜けだせないほど、どん底という環境は
人の心を蝕むという恐ろしい話ということになる。
そこまで頭で難しく制作側は考えていないだろうけどね。
制作側の感覚的根詰めの作業を理性的に言葉で表せばそうなるのかもしれないが。 特別難しい考えとは思わんがな。
考えを文章にまとめる作業は簡単じゃないと思うが。
というか、最低限このくらいのものがないと
映画として成立しないだろ。 「死にたい」と言ってた鍛冶屋の妻がお遍路さんに慰められて「でも、も少し生きたい」
と心変わりするくだり、あそこはブラックユーモアのつもりで入れたのかな?
俺は観るたびにあそこでクスッと笑ってしまうのだが… >207
ブラックユーモアにもとれるし、実際笑いを取れる場面ではあるが、
もっと深いものがある。
それはお遍路が会話の中でさり気なく話す、数々の含蓄ある台詞によって
宗教的な視点を含むものとなる(もちろん「お遍路」自体がそうした存在だ)。
つまり、どんなに酷い環境や境遇であっても、あの世が楽になると知っていても
人間というものは、現世において欲深い存在である、ということだ。
それが死を目前にし、自ら死を望む者でさえ、いざとなればその執着を捨てきれない、
という描写によって見るものに語られる。
前後するが、お遍路の台詞は非常に禅的要素を含むものだ。
どん底という、絶望の淵にあって、そこから自力で出るには、希望を持つことだ。
前レスにもあるが、それがトリックスターとしてのお遍路の役目。
死を境とする絶望に対する、生への希望を持たせること。
そのきっかけは与えるが、それをどう解釈し、どう生かすか殺すかは本人次第。
他力を説く仏教もあるが、禅はあくまで自力による悟りだ。
ここに厳しい視点がある。(だから本作品において音楽が唯一の活力であり救いなのだ。) 書き忘れたが、本作品は禅が主だと思うが、これは当時の現代思想における
「生の哲学」(ショーペンハウアー/ニーチェ/ハイデッガー/サルトル)の系譜にあたる。
戦後思想が吹き荒れた中において、時代的・思想史的に、『生きる』を作って「生」そのものへと
直接対峙した黒澤、もしくは脚本家や周辺スタッフがこれを知らないわけがないのでは。 最後に、ここで謎とされる役者の自殺についての議論において、
191の貴重な意見もふまえて考察すると、以下のような仮説がたつのでは。
どん底という環境において、自身をウソで固めることで切実な現実から避けていた、
もしくはニヒルな視線で世間を見ていた(本当は見ているふりをしていた)が、
遍路の示した希望を持ち、それを実行するには、まず第一に現実を直視し、
それを自力で乗り越えていかなければならない。そこに激しい自己との格闘があるのだ。
直視できない程の現状を冷徹に見つめることは、弱い人間にはとてもできないことだ。
基本的に彼等は弱い人間だから、世間から逃げ、現実から、自分から逃げてこのどん底と
呼ばれる宿へと集まってきて、ここから抜けだせないでいる。
これ以上逃げ場のない環境に仕方なくい留まって、その日その日を暮らしているのだ。
だから、今迄目をそらしていた現実を直視したとたんに、弱い自分に負けて自己=現実から
逃避したのが役者の自殺になるのではないか。
結果はどうあれ、捨吉はその中で唯一、ウソに毒されない純粋さと、現実に抗い自己を
革新していく強さとまだやりなおせる将来という若さがあった。
だから遍路は主に彼に着眼し、希望を持たせどん底からの脱出を説いたのだ。
ついでに記述すると、強欲という歪んだ目でしか世間を見ることができない大家には
トリックスター(=希望の目を宿す役目)の遍路も忌み嫌い退散する有り様である。
何度も好き勝手書いて失礼しました。これで退散します。
オレもこの作品はすごいと思う。
わかる人にはちゃんとわかってるんだな。 すごいとは思うけど、個人的には好きな作品じゃないです。
どん底な気分を味わうのが、どうもすっきりしない。
そういう人が結構いるので、人気的にはイマイチなのでは、と思う。 俺は「どん底」はそーとー好きだし、黒澤作品の中でも
クオリティかなり高い方だと思ってるんだけども、人気はイマイチなんだよな…
それが不満。
黒澤映画が好き〜とかいう連中でも「どん底」観てない人も結構いるんじゃ
ないかって気がする、長屋話ってだけで犬猿する人も。 >>217
まぁ地味な話だし、人から「どん底ってどんな粗筋?」と聞かれても窮するしな。
話し黒澤らしいヒューマニズムや活劇求めてる人は自然と避けているのかもね。
この作品は、三船と大家の妻とその妹で演じる悲劇に、
他の人が歌で彩るオペラみたい。
歌を歌う人達がすごく調和して上手なの >>207
笑うどころか、俺はぎょっとしてしまうんだが。 「どん底」ってリアル2chだなぁと思って観ている。 なるほど!さしずめ馬鹿囃子=VIPの所謂「才能の無駄使い」スレか 木賃宿の貧乏人のくせして、動きが脂ぎってエネルギッシュ。 三船以外の野郎共はどうやって性欲処理してたのかな? おかよ坊よりおせんのほうが魅力的だ、スタイルもいい。
でも夜鷹とはいえ、あんな野郎共だらけの長屋はきついだろうな 馬鹿囃子いいなぁ
あの曲どこかで手に入れられないのかしら 黒澤明映画音楽全集で聞ける…けど、映画そのままだけどね 根岸明美が一生懸命演技してるのに、
鼻緒を直してる千秋実に目が行って仕方が無いw 上で書いてあるけど、この映画は、
舞台劇のように、同じアングルの画面が続いたりする。
すごいのは、同じアングルのまま、あの長屋から誰もいなくて空っぽになる瞬間。
あんな間は、普通は映画ではご法度だろうが、すごく効果的だった。
三井弘次は、他の黒澤映画ではチョイ役ばかりで残念。
なかでも、あの隠し砦での使われ方は、なんだかな(w >三井弘次は、他の黒澤映画ではチョイ役ばかりで残念。
五社協定というの知ってる?
脇役だから、出られたんだよ。 >255
聞いたことあるけど、意味を知らないです。
どんな協定? >>255
五社協定は知っているが、
三井弘次が大手に所属していたとは
はじめて聞きました。
三井弘次(松竹)とクレジットされてたと思うけど。
違ったか? 三井弘次は松竹所属。
五社協定っていういけど実際は一律に縛ってたワケじゃないでしょ。
50年代後半とか六社協定になってからはかなりうるさくなった様だけど。
スターやスタッフの貸し借りはあったからね。
黒澤作品で三井がちょい役ばかりという事と五社協定そのものは別に
関係ないと思う。
すまん、最後の意味が全く分からん
「役者」って誰だ
どんなことしてた役? >>261
ごろうろっぷの病気に罹っていた人(藤原釜足)
元役者で、劇中「三人吉三」の名ゼリフを披露する場面もありました。
ラストは、現実を忘れてドンチャン騒ぎしていたところへ、役者自殺との知らせがあり、
全員、現実に引き戻され暗い表情になります。
人生を客観視して楽しんでる遊び人(三井弘次)は、場がシラケてしまったので、
「せっかくの踊りをぶちこわしやがった、馬鹿野郎」と悪態をつきます。 >>262-263
サンクス
寺行って酒飲みやめるって言ってた人ね。
実況で最後はびっくりしたとかいうレスがあったから、
三船でも出てくるのかとでも思ってたら、
え?何?くびつったって言った??やくしゃ?誰やねん?とか頭の中でグルグルして何も分からなかった。
一回目で役名まで把握出来ないんだよなー
まあそれより実況とか見てるなって話なんだがw
集中も出来たし最後がどうたらとか聞かないで済んだしね(でも役名に関しては集中してても難しい) 月も朧に白魚の 篝も霞む春の空
冷てえ風もほろ酔いに 心持ちよくうかうかと
浮かれ烏のただ一羽 ねぐらへけえる川端で
竿の雫か濡れ手に粟 思いがけなく手に入る百両
ほんに今宵は節分か 西の海より川の中 落ちた夜鷹は厄落とし
豆沢山に一文の 銭と違って金包み
こいつぁ春から縁起が良いわぇ これの音楽って
冒頭の鐘の音と
馬鹿囃子と
最後のチョン!だけだよね? 平成たぬき合戦ぽんぽこと同じ映画製作者=世捨て人=どん底
てのを、長屋話に荷包んで誤魔化してる話w 寝たきりのおかみさんの演技がみてて辛過ぎる・・・
俺の母親も一生貧乏のまま病に伏して死んでいった。
涙でみてられないんだよ >>264
ちゃんと観てなかったでしょう?
貴方の質問にびっくりしたよー! どん底 俳優名鑑
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm4112400 録画してたのにラストだけ映っていない…。
バカバカバカ。 お遍路さんがどう見ても貧乏神…いや、死に神にしか見えません。
原作ではどんなニュアンスのキャラなんでしょうね? >>268
マジかよ。お母さんをよおく供養してあげてくれ。
きっと喜ぶよ。 生きて死ぬ。それだけ。
楽しいも、苦しいもない。
楽しかったらどうだというのだ。
苦しかったから何だというのか。 >>269
初見には俳優の把握は難しいでしょう
それもあまり馴染みのない俳優ばかりだと それはあんまり関係ないと思う。
七人の侍で
七郎次と五郎兵衛の区別が
つかないとか言うやつもいるからな。
衣装、ひげで簡単にわかりそうなもんだが。 山中貞雄の人情紙風船観たらこの映画と雰囲気似てるね
たぶん黒澤は人情紙風船のこと頭に有ったんじゃね? BS2で初めて観た。 放送前の前説で“嘘”の話と、左卜全の存在を
どの様に捉えるかも見所だ、の様な話をしていたが、山本監督は
「自分は、左卜全はキリストの様な存在じゃないかなと思ってる」
と答えてた。
何か、そこの部分は監督はワザと嘘をついて、本当の事を
言ってなかった気がするなあ。 同心が来たとたんに逃げ出すキリストなんざいないやね。 山本は今回の特集を仕切る立場にあたって、自分が本当に言いたい事は殆ど伏せる、と決めてる節が見えるんだよ。
晩年の本木Pとの交流から相当の内情は聞き知ってるはずなのにそういう経緯さえ一切言及しない。
仲間内で本木の葬式を出した時に電話で黒澤に詰め寄った事がある事さえおくびにも出さない。
多分今回の特集において、山本は提灯持ちに徹する事に決めてるんだろうな。 「いっそ今みんなくれちまいなよ。」
「・・・ひぃふぅみぃよッ!4枚あらぁ。」
「・・・たしかに、明日バクチできれーにスってやる。」 テレビ朝日「TVタックル」でのビートたけしの発言(11月3日)
「みんな、国民はいらついてるよ〜ほんとにねえ・・選挙やったほうがいいと思うんだけどな〜」
国民の良心ビートたけしも早期解散しない麻生にあきれている!!!!!
今、いらいらしない奴って空気よめてね〜〜〜
さぁみんなーーー国民の良心ビートたけしに続けーーーーーーーーーーーーーーーー
草の根から早期解散を求める怒りの声をもっとあげるんだ〜!!ウォーーーーーーーーー!!!!!!
「わしもそろそろ、お暇さ」
「ふん、尻に帆かけてか」
「なんだって?」
「俺の眼は節穴じゃねぇ、おめえさん、ただの鼠じゃねぇとにらんだが、どうだぃ
足元の明るいうちに、さっさと荷物をまとめて出ていきな!」
「そういうおめえさんの足元はどうだい」
「なんだと!」
「どんな悪い奴だって、だれかにゃぁ、好かれてれるんもんだ。その好かれてる奴に嫌われたら
おしまいだと言うのさ」
記憶で書いたから、細かいとこ間違ってるだろうけど、めちゃくちゃ好きな好きなシーン。
雁治郎とボク全の神演技。ボク全は五十鈴の事を言ってるんだよね〜 オレ、ダイエットの食事制限の解禁日ってことで、たまに食べ放題のとこに
行ってるんだけど、今度行った時に、鋳掛屋のおかみさんの、
「ほんとだよ、お腹一杯、食べたこともないんだよ…、なんの因果かねぇ…」
っていうセリフを思い出して、メシを噴出しそうな気がする
この映画を観ると栄養満点で腹いっぱいになる。
それにしてもうちの母ちゃんと同じ年の香川京子がかわいい。
後、山田五十鈴の女優根性にはあっぱれ! >>289
本当、山田さん怖かった…
香川さんは声潰れちゃうんじゃないか?ってくらい最後叫んでたね。 口パクでいいのにちゃんと歌ってるとこがなんともパパパヤーですな 口パクではせっかくのト全風味が薄くなってしまうでパヤ。 現在ではこれだけの生活観のある役者集められないね。それぞれに役に会った
いい顔、今の俳優でこれだけの表情・顔をした人いないでしょう。昔は役者の
層が厚かったと今さらながら現在の芸能界・・うまいいい役者いないね。 どん底見てるとみんな臭そうだな〜って思う
今日地下鉄でリアル乞食と隣り合わせたもんで、あの時代って匂いとか気にしてなかったのかすげー気になるんだが
俺が思うに
桶かぶりが最凶
役者、殿様、おかよ坊あたりが強臭
三井と捨吉はメントールの匂いがしそうだw
おかよ坊は臭そう、いい意味で それは映画の雰囲気を出すために異臭を放ったのさ どですかでんとかもう見てるだけで気持ち悪い