「漏尽通ー生存の尽きてなくなったことを確認すること。漏尽智証通に同じ。」
「漏尽智証通ー煩悩を滅ぼさせる智慧。煩悩を断つ智を体得する神通。」
(『広説佛教語大辞典』東京書籍、中村元、1776頁)

信者さんで、普通の知性と良識があり、辞典を引いたことのあるなら気が付いて
ほしいのは、中村博士の書き方です。
「漏尽通=漏尽智証通」だというのに、両者の説明は別のように見えます。
普通、一つの言葉に二つの意味があるなら、「1.〇〇、2.△△」と
表現するはずだし、実際、中村博士は他の項目ではそのような書き方をしています。
だから、漏尽通に二つの意味があるなら、そのように書いたはずです。
大冊の辞典ですから、たった一行を省略しなければならない理由はありません。
だが、実際の解説では、それぞれに一つしかない。
これについて参考になるのが岩波仏教辞典の書き方です。

「漏尽通は自己の煩悩の尽きたことを知る能力。」(『岩波仏教辞典』)

もしペテン大作説のように漏尽智に二つの意味があるなら、
「1.〇〇、2.△△」とたった一行加えればよいだけです。
解脱は仏教の根幹ですから、漏尽通で煩悩を切るなら、
省略して良い内容ではありません。
にもかかわらず、百人からの学者たちが集まって作った辞典には
これ上記の一つしか載っていない。
さあ、知性と良識のある信者さんなら、これをどう解釈しますか?