朝三暮四

宋に狙公なる者有り。
狙を愛し、之を養ひて群を成す。
能く狙の意を解し、狙も亦公の心を得たり。
其の家口を損して、狙の欲を充たせり。

俄かにして匱し。
将に其の食を限らんとす。
衆狙の己に馴れざるを恐るるや、先づ之を誑きて曰はく、「若に芧を与ふるに、朝に三にして暮に四にせん、足るか。」と。

衆狙皆起ちて怒る。

俄かにして曰はく、「若に芧を与ふるに、朝に四にして暮に三にせん、足るか。」と。

衆狙皆伏して喜ぶ。

物の能鄙を以て相籠すること、皆猶ほ此のごとし。
聖人智を以て群愚を籠す。
亦猶ほ狙公の智を以て衆狙を籠するがごとし。
名実虧けずして、其れをして喜怒せしむるかな。