>>909
「銀河鉄道〜鉄橋の下で〜」

列車は白い煙と爆風で勢い良く発車した。

川は風圧で波打ち、列車は空高く舞い上がる。

大気圏を抜けるまでの振動は半端ではない。

車掌は険しい顔でぶるぶる揺れる頬の肉に緊張を隠せなかった。

やっと大気圏を抜ける頃、列車は嘘の様に真空をふわふわと浮いていた。

車掌は安堵の表情で操縦席を立った。

「切符を拝見しまーす…ん!?」

車掌は目を疑った。

「い、犬だけ!?」

車掌は震える犬を抱き上げる。
犬はつぶらな瞳で車掌の頬を舐めた。

「ほら、これが宇宙だぞ。見えるか?ワンコ。よしよし」

車掌は犬を抱いたまま、いつまでも
車窓の外に広がる宇宙を眺めていた。

そしてひと言呟いた。

「オレ…何しに行くのかな?」

どこまでも続く闇の中で小さな地球が青く輝いていた。