0922手ぶらの乞食
2019/09/04(水) 15:40:48.27ID:jE1U0Qyj「銀河鉄道〜鉄橋の下で〜」
列車は白い煙と爆風で勢い良く発車した。
川は風圧で波打ち、列車は空高く舞い上がる。
大気圏を抜けるまでの振動は半端ではない。
車掌は険しい顔でぶるぶる揺れる頬の肉に緊張を隠せなかった。
やっと大気圏を抜ける頃、列車は嘘の様に真空をふわふわと浮いていた。
車掌は安堵の表情で操縦席を立った。
「切符を拝見しまーす…ん!?」
車掌は目を疑った。
「い、犬だけ!?」
車掌は震える犬を抱き上げる。
犬はつぶらな瞳で車掌の頬を舐めた。
「ほら、これが宇宙だぞ。見えるか?ワンコ。よしよし」
車掌は犬を抱いたまま、いつまでも
車窓の外に広がる宇宙を眺めていた。
そしてひと言呟いた。
「オレ…何しに行くのかな?」
どこまでも続く闇の中で小さな地球が青く輝いていた。
完