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小説「セミ男」
作.手ぶらの乞食


男は完全にセミの虜だった。

男はとある科学研究所で人造人間の研究をしていたが、彼は人間に興味がなかった。

彼の夢は喋るセミと語り合う事だ。

セミの名はスティーブ。「よう、スティーブ今朝は随分と早起きだね」

「やぁ、博士、喉が乾いた。モーニング樹液を頼む」

そんな事を夢見てセミの解剖を始めた。

「なんて事だ!声帯がない!」

セミは何かエラの様なものを擦り合わせて鳴いていたのだ。

セミの構造は人間のそれとはまるで違っていた。

「脳もなければ心臓もない!どうやって生きるんだ!この生きものは!」

男はその時、神を知った。