碧巌録(へきがんろく)  第49則  三聖透網金鱗(さんしょう とうもうきんりん)

本則

三聖問雪峯、透網金鱗、未審以何為食。
雪峯云わく、待汝出網来、向汝道。
一千五百人善知識、話頭也不識。
雪峯云う、老僧住持事繁。


三聖慧然禅師(えねん ぜんじ)、雪峰義存禅師せっぽう ぎそん ぜんじ)に問う、「網を透る金鱗、いぶかし何をもってか食(じき)と為(な)さん?」。

峰云く、「汝が網を出(い)で来たらんを待って、汝に向かって道(い)わん」。

聖云く、「一千五百人の善知識(ぜんちしき)、話頭(わとう)もまた識(し)らず」。

峰云く、「老僧住持、事繁し」。



網を透る金鱗:どんな網にもかからぬすばらしい魚。悟りを越えた自由自在な人。

一千五百人の善知識、話頭もまた識らず:一千五百人もの修行僧を指導する大宗匠(雪峯義存)が問答の仕方もご存じない。当時雪峰山には千五百人もの修行僧が集まっていたという。

老僧住持、事繁し:私は寺の仕事が忙しいので、これで失礼。

本則

三聖慧然が雪峰に聞いた、「悟りを越えた自由自在な人は毎日をどのように過したら良いでしょうか?」。

雪峰は云った、「まず網を出で来なさい。そうしたら、お前さんに言おうよ」。

三聖は云った、「千五百人もの修行僧を指導する大宗匠が問答の仕方もご存じないとは驚きだ」。

雪峰は云った、「わしは寺の仕事が忙しい。これで失礼」。

→ 空を問う、三聖。 空即是色、と還(かえ)す雪峰である。
   三聖は色即是空を説き、雪峰は空即是色と還した。