鎮州に大蘿葡頭(らふとう)を出す
天下の衲僧 則を取る
只だ知る自古自今
争でか弁ぜん鵠(くぐい)の白く烏の黒きことを
賊、賊
衲僧の鼻孔 曽て拈得せらる


則を取る: 手本とする。
自古自今:古今を通じて変わらないもの。
鵠(くぐい) : 白鳥の雅称。


「鎮州に大蘿葡頭(らふとう)を出す」
と言う趙州の言葉を世の中の多くの禅僧は立派な手本のように考えて、あり難がるかも知れない。
しかし、白鳥が白く烏が黒いのを議論する必要がないのと同じような自明のことを言っているに過ぎない。
しかし、この言葉にはこだわりや情識のしがらみを除き取る賊機があるのは確かだ。
後生大事にしていた僧の悟りも情識も奪い取ってしまったに違いない。
この質問をした久参の僧はひとかどの見識を持った僧に違いないが老練な趙州によって鼻の頭を掴まれ、ねじ上げられてしまったわい。
と言っているように思われる。