碧巌録(へきがんろく)(碧あおい巌いわお の記録 第27則  雲門体露金風(たいろ きんぷう)

垂示
一を問えば十を答え、一を挙ぐれば三を明らめ、兎を見ては鷹を放ち、風に因って火を吹く。
眉毛を惜しまざることは則ち且らくおく。
ただ虎穴に入る時の如きは如何。
試みに挙す看よ。


一を問えば十を答える:心一を聞いて十を知るように、目から鼻に抜けるような賢さのこと。
ここでは明師のこと。
一を挙ぐれば三を明らめる:一を挙げれば他の三つを明らめるような俊発怜悧なこと。
風に因って火を吹く:風向きを考えて火を起こす。 弟子の得意とするところを伸ばしてやる。
眉毛を惜しまざること:昔からしゃべり過ぎると眉毛が落ちると言われる。 しゃべり過ぎて眉毛が落ちるのも厭わず説法をすること。 

垂示の現代語訳

一を問えば十を答え、一を挙げれば三を明らめるような明敏な人は兎を見ては鷹を放ち、風向きを見て、火を起こすように親切に指導する。
しゃべり過ぎて眉毛が落ちるのも厭わず親切に説法指導することは別に置こう。
ただ「虎穴に入る」ような必死の勇者が現れた時はどうしたら良いだろうか。
試みに例を挙げるので参究せよ。