草原でワルツを舞う二匹の蝶、円を描くようにステップを踏みながらまるでそのまま青い空に溶けていくように上へ上へと。

あるものがその二匹の蝶に名前をつけた。
サトリと。
ある国の王様はこのサトリを手に入れたいと願った。
眺めているだけであれだけ素晴らしいものだ、手に入れられたらきっともっと幸福になるに違いない。
けれど手で掴むと蝶は壊れてしまう。
網でとらえて籠にいれても蝶は華麗に舞うことはなかった、なぜならそこには青い空がなかったから。
困った王様はある賢者のもとを訪ね懇願した、サトリをどうしても手に入れたいと。

さて、王様はサトリを手にいれることができたのだろうか?

賢者は王様にそれを示した。
そこにあったのは小さな手鏡で、促されるままに王様はそれを覗き込む。
するとどうだろうか、その鏡の中には青い大空へとかけ上っていく二匹の美しい蝶の姿があったのだ。