>>177
試(こころ)みに挙(こ)す看(み)よ

本則

長慶ある時云く、「むしろ阿羅漢に三毒ありとは説くとも、如来に二種の語ありと説かじ。如来に語なしとはいわず、ただこれ二種の語なし」。 
保福云く、「そもさんかこれ如来の語?」。

慶云く、「聾人いかでか聞くことを得ん?」。 
保福云く、「まことに知んぬ、汝が第二頭に向って言うことを」。

慶云く、「そもさんかこれ如来の語?」。 
保福云く、「喫茶去」。 
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注:
長慶:長慶慧稜禅師(854〜932)。
法系:六祖慧能→青原行思→石頭希遷 →天皇道悟→龍潭崇信→  
徳山宣鑑 →雪峯義存→長慶慧稜  
保福:保福従展禅師(?〜928)。長慶慧稜とともに雪峰義存門下の兄弟弟子で法嗣である。
長慶(兄弟子)と保福(弟弟子)はお互いによく議論(法戦)をしていたようである。  
本公案はその問答を用いている。
二種の語:方便と真実という二種の言葉。
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本則:
長慶はある時言った、 「阿羅漢には貧瞋痴の三毒が残っていることがあるかも知れない。 しかし、如来には二種類(真実と方便という)の言葉はない。 如来は語言三昧の一枚舌であり、二枚舌はない」。 
保福は聞いた、 「じゃあ、如来の言葉(語)とは一体どんなものだ?」。
 
長慶は云った、「お前のような聾人に言っても無駄だよ?」。 
保福は云った、 「それ、お前さんは第二義に落ちたじゃないか (本当は如来の言葉(語)とはどんなものか知らんのだろう)」。
 
長慶は云った、 「では貴公は如来の語は一体何だと言うのか?」。 
保福は云った、 「まあ、そうあせらず、お茶でも召し上がれ」。