碧巌録(へきがんろく)  第93則   大光作舞(たいこうが まいを なす)

本則

僧あり、大光(たいこう)に問う、「長慶云く、『斎によって慶讃す』と。意旨いかん」。
大光は舞をなす。僧、礼拝す。
光云く、「箇の何を見てかすなわち礼拝す?」。
僧、舞を作す。
光云く、「この野狐精」。



大光:大光居誨(こかい)(837〜903)。石霜慶諸の法嗣。
法系:六祖慧能→青原行思→石頭希遷→
薬山惟儼→道吾円智→石霜慶諸 →大光居誨
長慶:長慶慧稜(854〜932)。雪峰義存の法嗣。
法系:六祖慧能→青原行思→石頭希遷 →天皇道悟→
龍潭崇信→徳山宣鑑 →雪峯義存→長慶慧稜  
野狐精:いかさま野郎。

本則

ある僧が大光和尚に聞いた、
「金牛和尚のことを聞いたら、長慶和尚は、『斎によって慶讃す』と答えられたそうです。
その意味はどういうことでしょうか?」。
すると大光和尚は舞った。それを見た僧は大光和尚を礼拝した。
大光和尚は云った、
「お前さん、何でわしを礼拝するんだ?」。
僧は舞った。
大光和尚は云った、
「このいかさま野郎!」。

【本則】

 ある僧が大光に質問した。

 「長慶が、『昼食に際して、祝賀の法要をしている』と言った、その意味は何か?」。

 すると大光は、舞いを舞った。

 僧は礼拝した。

 大光が聞いた。

 「何を見て、礼拝したのだ?」。

 僧は舞いを舞った。

 大光が言った。

 「このエセ禅者め」

〇 この公案に参じる人、特に頭の硬いいいなりの人は、ドギマギするに違いない。
  先人の物まね禅を次へ次へと伝えていくならば、なにごとにおいてもも、途絶え果てる。