>>485

木仏火を渡らず
常に思う破竈堕(はそうだ)
杖子忽ちに撃着す
方(まさ)に知んぬ我に辜負(こぶ)することを
?
注:
木仏火を渡らず:木仏は火に触れると焼かれて燃えてしまう。
破竈堕(はそうだ):破竈堕和尚:嵩山の慧安国師の法嗣。
破竈堕和尚は竈を打ち砕きカマド神を救ったという次のような有名な伝説が伝えられている。
昔、破竈堕和尚が住んでいた寺の近くにカマドの神を祀った霊廟があった。
祭礼になると沢山の生贄を供えるので竈は非常な殺生をすることになる。
それを気の毒に思った破竈堕和尚はその霊廟に入り主神であるカマドを杖で三べん打って
「やい!、このカマド神!お前は単に泥と瓦を泥で塗りこんで作られたものに過ぎないではないか。
お前の霊はどこから来て、聖は何によって起こり、何故ものの命を煮て殺すのか?」と一喝した。
すると衣冠束帯の気品ある人が現れて和尚を礼拝して、「私はカマド神です。
永い間、悪業の報いでこの中に閉じ込められていましたが、
今日、和尚の説法によってここを脱して天に生まれ変わることができました。厚くお礼を申し上げます。」
と竈から出してくれた恩を感謝した。
和尚は「これがお前の本性なのだ。私はお前を叱っているのではないのだ。」と言った。
この事があってから世の人は和尚を破竈堕和尚と呼んだ。この頌はこの伝説に基づいて作られている。
和尚がカマドを一撃したことでカマド神の煩悩妄想を根こそぎ粉砕しカマド神が長い間真の自己に背いていたことに気付かせることができた。
真の自己に背いているは何もカマド神だけではない。
圜悟克勤は「お前達も真の自己を見失って、真仏に背いているのではないか。
自分達が持って生まれた真仏を取り戻して縦横無尽に使わなければならぬ。」
と着語して我々に自覚を促している。