http://www.cmn.hs.h.kyoto-u.ac.jp/CMN8/imanishi-shohyo.html
書評 By 今西悠一郎
なぜこのような書物が書かれてしまったのか 視覚障碍の日本学
吉本光宏著『クロサワ 映画学と日本映画』(デューク大学出版局)Mitsuhiro Yoshimoto, Kurosawa: Film Studies and Japanese Cinema (Duke U.P., 2000)

 いくら無知蒙昧な一般のアメリカ人向けに書かれたものとはいえ、これではあまりにもひどすぎるというものだろう。
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本書は、古今東西に書かれた多くの黒沢明論を引証しながら、そこに付け加えるべきものを何ひとつもっていない。先行研究に多くを負いながら、残念ながら先行研究に何ひとつ報いることのないまま終わるのである。
(具体的な批判=略)
万一アメリカの映画学が本当にこのような書物を許容したのだとすれば、それはひとえに日本に対する無知のなせるわざ(未熟な日本学のせい)である、とりあえずはそのように信じたい。
本書はその副題とはうらはらに、残念ながら「映画学」の書物ではなく正確に「日本学」の書物(しかも誰にでも書ける入門篇)にすぎないのである。

### サーベイ(要約・紹介)しかできぬ典型的な日本人的な本だということか。
この書評を読むと本書の主な論点は佐藤忠男の要約・紹介だけのように思える。(佐藤忠男の小津安二郎・評伝は良かった。)それはそれで意義があると思う。