Sは佐藤公博 Mは三浦清弘だな

もし、あの時…我が身に迫った黒い霧(後編)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/dailyfield/entertainment/dailyfield-20181123006

投手Sが大阪球場の選手入り口横の小さな事務所で、午後4時から5時頃に、
後ろを向いて電話をしている姿を頻繁に見た。それは組織がハンデをつけ、張り手に知らせる時間帯だった。

同時期、投手Sはチーム内で目を付けた投手に八百長を持ちかけていたらしい。投手Мはその疑いで事情聴取を受けている。

ある日、投手Sは大阪球場のロッカー横の小部屋に私を呼び入れた。

「これ、着ないか?」。ペンギンマークのポロシャツを差し出した。そんなことをする選手に出会ったことはない。
当時は高価なシャツだ。どうすべきか。戸惑いの中でシャツのサイズが目に入った。

「あっ、Sさん、これ、アメリカサイズのL。おれには大きすぎるわ」

そう断って、なぜかほっとしたことを覚えている。あのシャツを受け取っていれば?。
知らぬ間に黒い霧の中に入っていたのではないか。

もし投手Sが警察の調べで先発投手情報の入手先を問い詰められた時に
「シャツを渡してデイリーの記者にも協力してもらった」とでも答えていたら、私はどうなっていただろう。

半世紀も前の出来事。今も思い出すと戦慄(りつ)を覚える。

投手Sは69年のシーズン限りで引退。事実上の永久追放になった。
一時、暴力団に追われたらしいという噂を聞いたが、それ以後の消息は知らない。(終わり)