「まさかの失速」

優勝争いの大本命である西武が109試合目となる9月16日、遂に首位に立った。前半までの低迷も、先発陣の巻き返しで6月からの4ヶ月で52勝
28敗と本領発揮。珍しく森祇晶監督も「日程的にゆとりがあり、勝算があった」と思っていたほど、流れは西武といった向きがあった。実際9月27日
現在では2位・オリックスに、3ゲーム差をつけて残り12試合の展開という絶対有利の状況だった。
だが、勝てなかった。肝心の10月に4勝7敗と負け越して、リーグ新となる5連覇を逃したのだ。7敗のうち1点差負けが4度、結果的にどれか1つでも
取っていれば優勝していた。

仕上げに向け「万全のローテーションで臨んだ」はずの森が最も悔やんだのは、“ブライアント・ショック”の4連発よりも、ダイエーに最大8点差を
逆転された試合だった。15勝のエース・渡辺久信の先発での2位転落だっただけに、投手コーチの八木沢荘六は「信じられない」と首を振り、森も
「記憶にない負け方」と声を絞り出すのが精一杯だった。
1日で首位を奪い返した後の10月7日に、またもダイエーに対して1−2で競り負けた試合も痛かった。20歳の村田勝喜に7回まで11四球を貰い
ながら、得点は押し出しの1点のみ。8回からは先発で勝ち頭の加藤伸一に抑えられて、結果2安打しか打てない敗戦だった。
終盤まさかの失速をした西武、森が就任してから「ストッパーらしいストッパーがいなかった」と抑え投手の必要性を痛感したシーズンだった。3年
連続でリーグトップの完投数を誇る先発陣だけでは、勝ち切れないぐらい他球団の打力がアップしていた。

ここで森は一つ記憶違いをしている。10月決戦の話をした上で、共に絶好調で負ける気がしなかったという渡辺久と郭泰源について、「万全の状態で
3試合ずつに登板させたにもかかわらず、1試合も取れなかった」と述懐しているが、10月6日の日本ハム戦に郭が完投勝利している。もはやその
前後の日で、ダイエーに痛い負けを喫したショックが大きかったということか。指揮官が勝った試合をも忘れるぐらいの失速で、西武は抑え投手探しに
走る事になる。  (了)