手塚治虫は権威を利用して自分を大きく見せるのが好きだった。
その際には、嘘をつくなというクレームが来ない巧妙な話術を駆使した。

治虫「漫画を持ち込んだ私に対応してくださったのが、いま思えば当時毎日新聞社に在籍していた井上靖さんだったと思います」
井上靖が後に有名になった手塚治虫との縁を「そんな記憶はない」とわざわざ否定することは考えにくいし、
万一否定されたとしても「思います」と予防線を張っているから嘘をついたことにはならない。

治虫「三島由紀夫と歩いていたら西の空にユラユラーと。空飛ぶ円盤だってんで追いかけたが見失った」
UFO特集のラジオ番組のテーマに対して都合の良すぎるエピソードに文豪の名まで強引に入れ込む力業。
三島はすでに割腹自殺して故人だから本人から「そんな事実はない」と反論が来ることは絶対にないし、
遺族だって三島の生前の行動をすべて把握しているわけではないから否定する根拠は示せない。