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つづき

大学院生活で見えてきた数学者として生きていく道
大学院時代は充実した日々でした。同学年20人のうち、女子学生は私一人だけ。でも、特に女性扱いはされず(笑)。研究室に入ってきた先輩の教授への挨拶は、「昨日の問題、解けました!」。朝から晩までみんなで数学の話ばかりしていました。そんな雰囲気がとても楽しかったですし、刺激的な毎日でした。単に勉強熱心というだけではなく、まだ誰も解明していない新しい分野に挑戦しようという気風があったと思います。私も負けず嫌いなので、そうした先輩たちや先生の話の中に出てくる論文をコピーし、書籍を片っ端から手に入れていました。学会や勉強会などにもできるだけ顔を出すようにして、専門分野以外でも自分の周囲にある知識をなるべく多く吸収したいと燃えていました。当時は必ずしもすべてのことが理解できたわけではありませんが、気になることや興味がある対象に積極的にアプローチする姿勢は、研究者として大切な心がけではないかと思います。

現在の私の研究は、そんな大学院生活の中で1本の論文に出会ったことが出発点になっています。当時、京都大学に在籍していた谷口雅彦先生による無限次元タイヒミュラー空間論の論文です。私はその論文の内容を検討し、自分の考察を加えて、修士論文を書きあげました。その時、ようやく数学者としてのスタートラインに立ち、「数学者として生きる」という可能性が自分の前に広がったと思いました。

博士後期課程を修了後、さらに2年間、小島定吉教授(現・情報理工学院数理・計算科学系)のもとで日本学術振興会(JSPS)特別研究員(PD)として過ごしました。その間、City University of New York を訪問し、この分野の研究者の方々と交流することができました。

今の自分があるのは数学への強い思い+周囲の支え
以下略
終わり