>>855
つづき

 10歳を過ぎて論理的思考力を育むべき時期にさしかかったら、計算のような単純作業よりも、あーでもない、こーでもないと考えることに時間と能力を割いてもらいたいという現れなのだろう。

 それでも「九九」を暗記させ、電卓の自由な使用を禁止している国の方が、数学の学力が高いと言えるなら、日本流の教育を貫く意味もあるだろう。

 しかし、残念なことにそうはなっていない。先の調査で、最も電卓を自由に使わせている国であるシンガポールや香港は、経済協力開発機構(OECD)によるOECD生徒の学習到達度調査(PISA)における「数学リテラシー」部門の上位常連国である(直近4回の調査でシンガポールは2位→2位→1位→2位。香港は3位→3位→2位→4位。日本は9位→7位→5位→6位)。

 また、教育における電卓利用の是非を考える学術研究でも、電卓や表計算ソフトのような計算ツールを活用することで、子どもの概念的な理解力が高まるという報告が多数寄せられている。

(本原稿は『とてつもない数学』からの抜粋です)

つづく