>>102

つづき

歴史
随伴の遍在性
随伴関手の考えはダニエル・カンによって1958年に定式化された。多くの圏論の概念と同様に、ホモロジー代数において計算を行おうとした際に必要になったために導入された。この問題のきれいで系統的な表現を与えようと向き合った人々はアーベル群の圏において
hom(F(X), Y) = hom(X, G(Y))
のような関係があることに気づいていた。ここで、Fは関手 -* A(つまり、Aとテンソル積を取る)であり、Gは関手hom(A,?)である。
(注:-* Aの ”*”は、xを○で囲んだテンソル積の代用である。無理をすると文字化けするので、 ”*”で代用した。)
ここで等号を使うのは記号の乱用である。これらの群は実際には等しくないが、等しく見せるような自然な方法がある。自然に感じられる理由として、一番に、元々はこれらがX × AからYへの双線形写像の2つの異なった表現であるからである。しかし、これはテンソル積に関するいくぶん固有な話である。圏論においての全単射の自然性は自然同型の概念が元になっている。

この用語はヒルベルト空間において、上記のhom集合の間の関係と似た関係 \langle Tx,y\rangle =\langle x,Uy\rangle } \langle Tx,y\rangle =\langle x,Uy\rangle を満たす、随伴作用素TとUから来ている。FはGの左随伴といい、GはFの右随伴という。ただし、G自身もFとはかなり異なった右随伴を持ちうる(以下の例を見よ)。ある種の文脈においては、詳細なヒルベルト空間の随伴写像のアナロジーが可能である[1]。

これらの随伴関手の対を探し始めると、実は抽象代数では非常にありふれたことであり、他の分野でも同様であることが分かる。以下の例の節ではこの証拠を与える。さらに、普遍的構成はもっと普通にたくさんの随伴関手の対に持ち上げることができる。

つづく