>>34 つづき

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 つい最近、私もこれに似た経験をした。ただし、新発見とはいっても、誰でも思いつきそうなもの(コロンブスのタマゴ)であって、これまでたまたま見逃されてきたことを発見したという点、学会場はざわつくどころか、水をうったように静まりかえってしまったという点が、メンデルの場合とは大きく異なっているのだが、・・・。  私の体験談を綴ってみたい。

 現在の数理統計では、データの母集団分布は正規分布であることが暗黙の前提となっている。ところが、実際にデータ解析を行ってみると正規分布しないこともしばしば経験される。
一方において、非正規分布に関する理論的な構築は非常に手薄であり、非正規分布に対しても、正規分布に適用される方法が適用限界を無視して無批判に使われているというのが現状である。

 これまで、非正規分布を理論的に正確に扱うことはきわめて困難であるとみなされてきた。すなわち、非正規分布に対しては、アート(技巧)はあってもセオリー(一般的理論)がなく、勘や経験や個々の問題の性質に負っていて、端的にいって決定打はなかった。
いまある正規分布至上主義の統計理論が開発された当時は、精度のよい計算法がないため、そこから具体的な見通しを得ることは難しかったからである。

 ところが、コンピュータの出現で事情は一変した。私は最尤法(サイユウホウ)という数学的手段を用いて、その壁に挑むことにした。専門外の人にとって、最尤法という統計用語自体がすでに馴染みが薄いと思われるが、「尤」はモットモの意であり、最尤法は最も尤もらしい推定量をコンピュータを用いて計算する方法だと考えてほしい。

つづく