>>30 つづき

 学位を審査する教授さえも学会論文の数で評価される時代ですから、「先端的研究イコール短絡的研究」ということになってしまいます。私のごとき三流の研究者が偉そうな口をきくことはしたくないのですが、このように考えているのは私ばかりではないでしょう。
科学研究も人間の営みである以上、流行には逆らえないし、研究者社会でのはやりすたりの激しさはまさにファッション並ですが、流行は1年ももたないのが世の常で、熱はすぐに冷めきってしまいます。
突破口の切り開きをどこに求めたらよいのか−−−これはいつの時代にも普遍的な課題なのでしょうが、一時のブームに翻弄されず、しっかりと自分を律しあせらず次のステップへの独創的なブレークスルーをめざしたいものです。

<いまタコツボの中で>
 科学技術が高度に発達すると専門分科が進み、分野ごとに高い壁を張り巡らせて閉じられた世界と化すため、研究者の視野は狭くなる傾向があります。
この自閉症的な傾向はタコツボ専門化と称され、研究者は専攻外を敬遠し、保守主義に徹する偏屈で孤独なタコとなってしまいます。このように、専門家が象牙の塔の周囲に厚い壁を作って権威を誇り、他分野のことに関知しないようなムードはあまりいただけません。
自分と無関係な学問から実りある刺激をうけることも珍しくありませんから、研究者自身がもっと遠くを見る視点を手に入れる努力をしないと、一生タコツボの中で終わってしまうことにもなりかねません。

つづく