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不完全性定理の成立しない体系
不完全性定理は「『自然数論を含む帰納的公理化可能な理論が、無矛盾(ω無矛盾)であれば』〜」という形の定理である。したがって、自然数論を含まない公理系や、帰納的公理化可能でない理論が完全であっても、不完全性定理とは矛盾しない。
真の算術やペアノ算術の無矛盾完全拡大などは無矛盾かつ完全であるが、帰納的公理化可能でない。とくに真の算術は算術的に定義不能である。この結果はタルスキの真理定義不可能性として知られる。
プレスバーガー算術は帰納的公理化可能、無矛盾かつ完全である。プレスバーガー算術は加法しか含まない公理系であり、ゲーデル数によるコード化のテクニックを扱えない。そのため、不完全性定理は適用できない。
また、実閉体の理論やユークリッド幾何学も完全であり、(直観に反して)算術を含まないため、不完全性定理は適用できない。したがって実閉体の理論は決定可能である。もっと精密にいうと実閉体の理論では量化記号消去が可能である。この事実は数式処理系の実装などに応用されている。
なお、群や環の公理などは、「自然数論を含まない帰納的公理化可能かつ無矛盾な公理系」であり、不完全性定理は適用できないが、不完全である。例えば、可換群と非可換群がともに存在することから、健全性定理より、群の公理からは積の可換性は証明も反証もできない。
(引用終り)

以上です