>>155 つづき
”次の命題は定理5.6 からの直接の帰結である.
命題8.3 m を2 以上の自然数とする. 法m に関する剰余類が逆元もつためには,零因子でないことが必要十分である.
また,このような剰余類はm と互いに素な整数a によってa と表される.”

http://nakano.math.gakushuin.ac.jp/~shin/html-files/Algebra_Introduction/
「代数入門」(2016)の資料 学習院大学理学部数学科・中野 伸 研究室
http://nakano.math.gakushuin.ac.jp/~shin/html-files/Algebra_Introduction/2016/05.pdf
「5 整数の合同」 最新版 09/12
(抜粋)
整数a, b の最大公約数が1 のとき,a, b は互いに素であるという. 次の命題は,法と互いに素な整数による割り算が可能なことを示している.
命題5.6 互いに素な整数a,m について次が成り立つ.
(1) a は法m に関して可逆である.
(2) b, c ∈ Z がab ≡ ac (mod m) をみたすならば,b ≡ c (mod m) が成り立つ.

証明
(1) gcd(a,m) = 1 よりax+my = 1 (x, y ∈ Z) と書けるが,
 これよりax−1 = −my はm の倍数,すなわちax ≡ 1 (mod m) であるからa は可逆である.
(2) ab ≡ ac (mod m) の両辺に,a の法m に関する逆元x を掛ければよい.

さて,a が法m に関して可逆ならば,逆元x を用いてax = 1 + my (y ∈ Z) と書けるが,このことは定理3.2 よりgcd(a,m) = 1 を意味する.
上の命題とあわせれば,法m に関するa の逆元が存在するためには,a,m が互いに素であることが必要十分であることがわかる.
式で書けば,gcd(a,m) = 1 ←→ ax ≡ 1 (mod m) をみたすx ∈ Z が存在する.
とくに,p が素数のときは,a ?≡ 0 (mod p) である任意の整数a に対して,法p に関する逆元が存在する.

一般に,gcd(a,m) = 1 のとき,ax にx = 1, 2, を順々に代入していってm で割った余りが1 になるものを探すことで,a の法m に関する逆元のひとつが求まる.
実際に,m ≦ 20 くらいならばこの方法は実用的である.
しかし,大きなm に対しては効率が悪い.
命題5.6 の証明をみると,ax + my = 1 (x, y ∈ Z) のとき,x がa の法m に関する逆元になっているので,ユークリッドの互除法を用いてx, y を求めれば効率よく計算できる.
(引用終り)