>>286 つづき

3.4 言わなかったこと.
かってな確率空間を与えたとき,仮定された性質を持つ確率変数が存在するかどうかは当然チェッ
クすべきことである.例えば,独立な確率変数が複数個(特に無限個)存在するかどうかにこれまで
答えなかった.収束定理自体は「しかじかの確率変数列があればしかじかの結果が成り立つ」という
形なので何ら矛盾はないが,「しかじかの確率変数列」がなければ,定理は全く意味がなくなる.こ
の問題は直積測度空間の構成によって肯定的に解決するが,その詳細は演習とする.空間の構造に
立ち入ることなく議論が展開できることが確率論の表現上の「強み」だと個人的に思うからである.
(もちろん「立ち入ることなく」といっても,実体がなければ意味がないのだから,実体の存在に対
する嗅覚は持っていることが前提で,単に,論文を書くとき,講義をするとき,長い導入を避けるこ
とができる,と言っているだけである.)
(P42 発展:独立性に関するその他の注.(i) 独立な確率変数列は存在する.(そのような対象を想定しても論理上無内容ではない,ということ.)辺りが参考になるだろう)