0284現代数学の系譜11 ガロア理論を読む
2016/07/30(土) 15:07:37.86ID:CYC/Gm2e0 イントロ.
(抜粋)
講義の目標. 確率という概念は,賭博等と関連して,大変古くからあったと思われる.これに統計
学(人口統計,品質管理)や遺伝学も加わって,古典的な確率論の数学が発展した.
近代から現代への移行期に重大な研究対象が加わった.19 世紀にブラウン運動という物理現象が
発見され,工学で知られていたホワイトノイズとともに,20 世紀の重要な理論的概念が人類の前に
姿を現した.(二つの対象のように書いたが,両者とも分子の熱運動に由来するという意味では一つ
の物理現象である.)連続変数(時間変数)をパラメータとする非可算個の確率変数の列を扱う確率
過程論の機運が熟していた.
他方,以上とは独立に20 世紀初頭にルベーグが測度論を創始して,我々が「大きい(長い,広い)」
「小さい(短い,狭い)」と感じる定量(長さ,面積,体積)の概念をσ 加法性を持つ非負値集合関
数として理解することが数学的に自然であることを発見した.
コルモゴロフは,当時最先端の数学であったこのルベーグの測度論に立脚して,古典的な「さいこ
ろと人口分布と遺伝学」の確率論と分子の熱運動という当時の最先端の理論物理の課題を統一的に
扱う数学的枠組み(公理)を完成した.これが20 世紀の確率論の始まりである.この講義はこの20
世紀の確率論の基礎を講義する.
解析学の一分野としての性格が強まった結果として,今日の確率論の講義は,「さいころ」の素朴
直感的な確率論に比べると,直感を排した,初学者に抽象的と見えるものになった.上に書いたよう
な高度な現象をも解析できる数学的枠組みが必要だからである.
この講義の到達範囲は(20 世紀後半の解析学としての驚異的な発展ではなく)素朴な(さいころ
の,高校で習う)確率論の範囲を20 世紀の(解析計算のしやすい)定式化で表現することである.
即ち,この講義では,測度論に基づく確率論の定式化と,その定式化によって自然に導かれる基礎的
初等的な事項をできるだけオーソドックスに紹介する.