仲間の中におれば、休むにも、立つにも、行くにも旅するにも、常に人に呼びかけられる。
他人に従属しない独立自由を目指して、犀の角のようにただ一人歩め。

四方の何処にでもおもむき、害心あることなく、何でも得たもので満足し、
もろもろの苦難に耐えて、恐れることなく、犀の角のようにただ一人歩め。

金の細工人が見事に仕上げた二つの輝く黄金の腕輪を、
一つの腕にはめれば、ぶつかり合う。
それを見て、犀の角のようにただ一人歩め。
このように二人でいるならば、我に饒舌といさかいが起こるであろう。
未来にこの恐れがあることを察して、犀の角のようにただ一人歩め。

実に欲望は色とりどりで甘美であり、心に楽しく、種々のかたちで心をかく乱する。
欲望の対象にはこの憂いのあることを見て、犀の角のようにただ一人歩め。

(原始仏教の美しい言葉(ブッダの言葉・悪魔との対話・神々との対話 中村元訳/岩波文庫より))