「India Goose」後編


 妻が居なくなったことを、まだ理解できないでいる幼い息子。
 私は、そんな幼い子供たちにどう接してやれば良いのか父親としての
  不甲斐なさに悩まされていた.........

  実際の私も、妻の面影を追う毎日であった...
   家に帰宅しても、寂しさが家中を包み込んでいるようだった...。


 そんな折、私は仕事の都合上、又、再びというか、
 度々、家を空けることが多くなり、実家の母に暫く来てもらうことになった。


 出張中、何度も自宅へ電話をかけ、子供たちの声を聞いた...
 二人を安心させるつもりだったが、心安らぐのは私の方だった気がする。


 そんな矢先、息子の通っている幼稚園の運動会があった。
 「ママと踊ろう」だったか、そんなタイトルのプログラムがあり、
     園児と母親が手を繋ぎ輪になって、お遊戯するような内容だった。

 こんな時に、そんなプログラムを組むなんて・・・ と思っていた時、
 「まぁちゃん、いくよ!」 " 娘だった! " 息子も笑顔で娘の手を取り、
                   二人は楽しそうに走って行った...

 一瞬、私は訳が分からずに呆然としていた...
 隣に座っていた母がこう言った。あなたがこの間、九州に言っていた時に、
  正樹はいつものように泣いてお姉ちゃんを困らせていたのね...


 そしたら、お姉ちゃんは正樹に、
 「ママはもう、いなくなっちゃったけど、おねえちゃんがいるでしょ?

 ほんとうは、パパだって、とてもさみしいのよ。だけど、パパは、ないたり
  しないでしょ? それはね、パパはおとこの子だからなんだよ!

 まぁちゃん、おとこの子だよね。だから、だいじょうぶだよね?
  おねえちゃんが、パパと、まぁちゃんのママになるからね!」
                           … そう言ったのよ。


 ・・・ なんということだ... 6歳の娘が、ちゃんと私の代わりに、
 この家を守ろうとしているではないか... と思うと目頭に熱いものが...