「バラ色の未来」

ー "目が覚めた!" ー  … 枕元の時計は4:30を指していた …

この世全部が一日を始める前の準備をしているみたいな静けさ...
この一年、大学を卒業してから色々あった......
会社の理不尽さ… 自分の無力さ… 周りとの空気感との違い...

知らない人たちとの複雑な関わりが、僕の頭の中をぐちゃぐちゃにかき回した。
器用に上手く立ち回れない自分に嫌気がさし、嫌いになる自分がいた。

... 窓から見下ろす、4時半過ぎの外の景色は全てが青く映った......
 ...絵の具が滲んだみたいに街の風景も、空も薄っすらと青かった...
    窓を開けると、夜明け前の冷たい風が入ってくる...

東の空は段々と白く光り始めていた... もうすぐいつもの日常が戻ってくる。

何気なく机の引き出しを開け、ごちゃごちゃになった
机の引き出しを整理していると、
ーーー 古い封筒に入った手紙が奥から出てきた ー

これは... 中学1年の頃、放課後に残ってでも書き上げるように担任の先生から
言われて書いたものだった。クラスメイトが堤出を終え続々と帰る中、当時、作文が
苦手な僕は最後の一人になりながらも一文字も書けずに悪戦苦闘していた。

何も書けないまま、時計の針が動くのをただ見つめるだけだった...
静寂に包まれた教室のドアを開け、「なんだ、まだ書いていたのか? さっさと堤出して、
早く帰れよ」入ってきた担任の先生は教室の入り口から俺に声をかける。

先生は俺の近くまで来て、机に広がった白紙を覗き見していった。
「書くことが思い付かないのか? 何でもいいんだぞ! 自分への手紙なんだから」

「じゃあ、白紙でもいいですか?」「それはダメだ! 今、思っていることを素直に
そのまま書けばいいんだぞ! 何かないのか? 将来の夢でも、これからやりたいことでも、
今感じている不安なんかでもいいんだぞ! 十年後に自分が見た時、結構面白いと思うぞ。

あの頃は、こんなこと考えていたんだぁ〜 ってな、まあ、ゆっくり考えな、出来たら
職員室に居るから、持ってきてくれ」その言葉を残して先生は教室から出て行った...

...あの頃、一生懸命書いた自分への手紙だった。そんな古い封筒に入れられた手紙を
広げた。「10年後の僕へ 10年後の僕は社会人として頑張っているのかなぁ〜
彼女は出来たのかなぁー 幸せですか? 夢をかなえていますか? ・・・」

ーーー色々と悩みながらも、延べ30行に及ぶ文章がそこには書かれてあった。
 ーーーーーーーーー バラ色の未来を夢見ていた自分がそこにいた!